魔界疾風録を終えて。
ようやく落ち着いたので、11月25日に浅草花劇場で行われたTHEMAKAIのセカンドアルバムのリリースイベントであり、魔界のスピンオフである「真田疾風録」について作者・演出家の目線から振り返ってみたいなと思います。
今回はフルバンド、リングなしという普段の魔界ではない条件のもとで行われました。
新木場を12月で終了し、来年からリングなしの状態に突入する新生魔界を占う実験的な意味合いも含んだ公演でした。
正直、作者・演出家としては課題だらけでした。(あくまでも作品の完成度として)
しかしながら、ここでは課題については触れないようにしておきます。基本的に課題とは解決するもので、それは次の作品で表現するものだからです。まぁたくさんありました。
課題に関しては、ある程度の予想の範囲だったのですが、驚いたのは、思い描いた以上にプラス面もあったことです。
フルバンドに関しては、予想通りというか信頼というか、さすがとしか言えない素晴らしい演奏でした。環境的には相当難しい状況であったと思いますが、バンマスの小林さんを筆頭に完璧な仕事ぶりでした。また新木場の致命的欠陥ともいえる音響面が改善するとここまで没入感が生まれるのかと改めて感じました。
そして、12曲という楽曲の多さに加えて、濃いストーリー展開を加えた上で1時間35分という上演時間におさまったのも個人的には良かったと思っています。
なによりも真田十勇士の面々の頑張りでした。
今回は魔界に堕ちる前の真田十勇士を描くことが目的でした。「生きる」ことを描くために「戦い」を見せるのがストーリーの肝。見事に皆生き抜いてくれました。
仲間を見守り、非情の運命に翻弄されながらも戦い抜く霧隠才蔵。
ASHに操られながらもおのれの運命に抗い続ける真田大助。
孤独なようで、仲間の絆に熱く最期の命を散らせた穴山小助。
無類の美しい旋律を武器に仲間の危機を救った筧十蔵。
美しくも儚く激しく生き抜いた三好伊三、清海の兄妹。
真田十勇士の原作でもある立川文庫から大きく逸脱したキャラ設定でありながら、凄まじいまでの魅力を放っていました。
そこには、ミュージシャンもプロレスラーも俳優もなくまさに魔界のハイブリッターの真髄があったと思います。
それを支えた戦いはリングではなく、平面の舞台上で行われました。特殊な舞台装置をMAKAIプロジェクトの石井代表が自作し、ぶっつけ本番ではありましたが、良く機能してくれました。
リングでなくなったことで、360度の表現が180度の一枚絵に変わり、どこまで魔界の表現が制限されるか心配だったのですが、一枚絵になったことで、照明の効果が上がったことと、見る側に伝えたい情報がまとめられたことは、作り手としての収穫でした。
そして、今回の一番大きな目的は魔界の民を魔界の兵に変えることでした。
これに関しては今回やってみてまだまだ可能性ややり方はあるとは思いましたが、徳川方に魔界から潜入した藤原純友、俵藤太のまさに猛将らしい指揮ぶりと、今回は徳川の将になった宇都宮快斗、神崎ユウキ、小豆洗いの開場からクライマックスまでの頑張りで、まさに戦場さながらの一体感が生まれたと思います。
魔界はまだまだ小さい。
これからさらに大きくなるために魔界の兵をもっともっと増やさなければいけない。
そのための第一歩となった回でした。
課題は、作者としては「痛み」です。
今までの新木場での慣れた仕組みでの魔界とは違い、いいことも悪いことも想定外のものが多く、そのたびにズキリと痛みが走りました。
ここ数日はその痛みで、思考が呻いていました。それはかつて魔界をはじめた頃に痛みと同じだったこもしれません。
音楽だけのほうが
プロレスだけのほうが
演劇だけのほうが
どれだけ楽か。
でもそれは魔界じゃないんですよ。
魔界であるためには、どんなにリスクを犯しても進化を目指す。
課題という痛みを、成長痛にして新しい魔界をつくります。
その前に。
5年間の万感の想いをこめて。
第66回魔界〜闇Darknessに全力を尽くします。
久しぶりにドラクルも戻ってくる!!
新木場最後の魔界。
お待ちしております。
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